Patchwork Dream

随時、記事の加筆・修正または再掲載します。

怪文書10選④

同乗

通勤電車
駅と駅の間でしばらく動かない

平日の朝
仕事に向かう途中なのに

本音を言えば
そのまま動かないでほしい

引き返せ
元いた愛しの我が家へ

止まるなら
そこで降ろせ

中途半端が一番よくない

社会は動いているのに
気分は停滞して

止まってくれたって
どうにもならぬ問題ってものがある

止まってなにやってる
増幅した問題が伸し掛るだけ

同乗するなら金返せ

―――Wikipedia「Category:即時削除対象のページ」は怪文書の宝庫

1.ブンブン、ハローユーチューブ!どうもヒカキンです!

まるで深層ウェブで見つかったHIKAKINの動画のような、不気味な雰囲気(と言うよりなんとなく脳内再生できるが映像化が上手くいかずどうしても地獄絵図になってしまう)が文章だけで十分伝わってくる。SEなどの気持ち悪さもそうだが、謎の誰かがせき込む音や、最後の「頭の中にも瞳が出てくる〜」のフレーズが、もう取り返しのつかない何かに誘われてもう戻ってこないことの示唆であるように感じられる。

2.おかんぎょさま

omocoro.jp

オモコロらしい少しふざけた要素もありつつ、ディティールが凝られている。部屋の様子や書籍など、本当に実在するかのような雰囲気で語られている。オチ然り、遡ってみるとそこに在ったみたいな部分も良い。

3.バーバパパとバーバママの出会い

はじめからお互い出会うために生まれたような存在だったという無理やりすぎる前提のせいで、お互いの印象や思い出も何もないままにお互いがで会って当然のように結婚している。そもそも人間でもないし(どういう生命体なのかも不明)、バーバパパ界隈はこういう出会いで反映していくのが普通なのかもしれない。多分よくわからない理由で子供が生まれる。

ところで、バーバパパ、バーバママとなるなら、子供はバーバなのか?おばあちゃんはバーバババになるのか?(なんやそのボボボーボ・ボーボボみたいなんは)

4.ミニ四駆についてるグリスをチンポに塗る無情を語るしかない

はい、寝る前にジャムおじさんのお話聞こうね
ミニ四駆についてるグリスをチンポに塗る無情を語るしかない
火照ったチンポを放熱するにはグリスしかなく、これはもう避けられないです
チンコと皮の間に生じる僅かな隙間に熱が生じ、そこからチンポは元の綺麗なピンク色から色あせます
いつまでもチンポはピンクがベストで、それも皮が余っていて小ぶりで、口に入れるとホクホクとした熱を感じる
思わず塩を振って食べたくなる衝動を抑え、代わりに塗るのはグリス・・・そういうことです
チンポにグリスを塗ってるとね、ヒヤッとした感覚で失禁しそうになるの
だから「ころさないでえ」と拡声器で泣き叫びながらグリスを塗ります
己の弱さを叫ぶことで開放されていくのを感じ、やがて何かが吹っ切れて「バニッシュ!」と一気に射精
しかし性欲はむしろここからがスタートで、普段は避けてるうちの家政婦の部屋に勝手に入る!
「すっげぇくせえ!」と枕に顔を埋めてチンポこすってグリス飛び散って屁もリズミカルに出てきますわあ!
音が大きすぎてうちの家政婦に気づかれた!
我に返って「ころさないでえ」と命乞いで一日が終わる!
よし、お話終わり
寝て良いよ

oreponica.jugem.jp

第一回目の「お話聞こうね」の詳細な一部の文章だが、読むと後悔する。まずタイトルが受け付けない。グリスはミニ四駆の動きを滑らかにするための潤滑油のようで、使ったことが無いのでわからないが、それを置いておいたとしてもツッコミどころが多すぎて文章化することを諦めるしかない。寝る前に聞いたら眠れない。夢に出る。

5.なんでもおまんこ

なんでもおまんこ   谷川俊太郎
 
なんでもおまんこなんだよ
あっちに見えてるうぶ毛の生えた丘だってそうだよ
やれたらやりてえんだよ
おれ空に背がとどくほどでっかくなれねえかな
すっぱだかの巨人だよ
でもそうなったら空とやっちゃうかもしれねえな
空だって色っぽいよお
晴れてたって曇ってたってぞくぞくするぜ
空なんか抱いたらおれすぐいっちゃうよ
どうにかしてくれよ
そこに咲いてるその花とだってやりてえよ
形があれに似てるなんてそんなせこい話じゃねえよ
花ん中へ入っていきたくってしょうがねえよ
あれだけ入れるんじゃねえよお
ちっこくなってからだごとぐりぐり入っていくんだよお
どこ行くと思う?
わかるはずねえだろそんなこと
蜂がうらやましいよお
ああたまんねえ
風が吹いてくるよお
風とはもうやってるも同然だよ
頼みもしないのにさわってくるんだ
そよそよそよそようまいんだよさわりかたが
女なんかめじゃねえよお
ああ毛が立っちゃう
どうしてくれるんだよお
おれのからだ
おれの気持ち
溶けてなくなっちゃいそうだよ
おれ地面掘るよ
土の匂いだよ
水もじゅくじゅく湧いてくるよ
おれに土かけてくれよお
草も葉っぱも虫もいっしょくたによお
でもこれじゃまるで死んだみたいだなあ
笑っちゃうよ
おれ死にてえのかなあ

谷川俊太郎詩選集 3 (集英社文庫)

これを本人が書いているという事が驚きだが、感性の凄さと後半の感じ、情緒が想像できない。向井秀徳の「俺は夜とヤっている」は「空とやっちゃうかもしれねえ」の部分がイマジネーションになっているのかもしれないと思って感動したが、森山直太朗の「うんこ」並みに衝撃的。

www.youtube.com

6.ケンドーコバヤシの過去

1: 誰そ彼 2022/12/27(火) 10:46:45.41 ID:5zZE+VZH0
・窃盗の罪で絞首刑となった母の死体から生まれた獄中出産ベビー
・出生直後、「男が人前で涙を見せてはならぬ」と自身の出生の瞬間も泣き声を上げることはなく、唇を噛み締めて涙を堪えていた
・母は現在抜きありのノーパン書道教室をやっている
・父親が猿の頭蓋骨で酒を飲んでいた
・ガキの頃銀貨5枚で父親に売り飛ばされた
・兄の名前はザ・パワー
・ある日突然大きな鷹に拐われた弟を見つけるために芸能界入りした
NSC内に蔓延する麻薬を撲滅するための潜入調査が理由で芸人になった(同期で一番怪しいのは陣内智則
・タンパク質の海にエネルギーが生まれた反動で生まれた
チベットの寺院に厳重に保管されていた『鬼の精子』を母親が静脈注射したことで受精した
・父は連続殺人犯
・ロシアで生まれた
・モンゴルで生まれた
・盗賊団に育てられた
・虎の乳を飲んで育った
・馬の骨をかぶって通学していた
Berryz工房9人目のメンバー・武蔵小山ガヤ子として活動していた
東京大学からの「君が入学してくれれば東大がさらに次のステップへ進める」との誘いをも蹴った
・高校卒業後は路上で絵を売りながらしばらくブラブラしていた
・19歳の時に何者かに記憶を植え付けられた可能性がある
・本名が小林卍丸
・本名が髑髏林禿鷹丸
・本名が鬼切林虎殺丸

tasogarech.blog.jp

怪文書としては趣旨が若干異なるが、エピソードとして最高に面白い(内容は嘘)。何を食ったらこんな経歴を思いつくのかって印象だが、普通に矛盾する内容が含まれていてツッコミどころが満載だが、溝端淳平が騙されているという記事も相まって面白い。

デビューして間もない19歳のとき、2009年放送の同局系ドラマ「BOSS」でケンコバと共演。当時、ケンコバは、本名が「髑髏林禿鷹丸(どくろばやし・はげたかまる)」、生まれたときは「獄中出産やった」と言っていたという。

 すべてでたらめだったが「ずっとだまされていた。全部本当だと思っていた」「獄中出産ってあるんやと思って。まだ高校卒業して間もなくやったんで」と信じていた溝端。そんな純粋な性格の溝端に、ケンコバは「淳平が異常なのよ。だから俺と出会ってて良かったと思うよ。詐欺とかに引っかかってたよ。疑うことを知らなかった」「信じる方がおかしい」とツッコんでいた。

www.sponichi.co.jp

7.八潮 久道『生命活動として極めて正常』

生命活動として極めて正常

どれも来なかったであろう近未来を描いたSF作品が多く、デッドパンな文脈がシュールで面白いし、世にも奇妙な物語っぽい。

全体的にパラレルワールドの現実世界を描いたように思えることが多い(「踊れシンデレラ」を除く)。個性的なキャラが多く、しかも謎の感嘆符や発声をすることが多い。また、作中の世界の中で読者側の世界の法律や学問やらの専門的知識の注釈が入ることによって、あくまで書籍内の世界は現実の日本の別世界での話であるという推測がよりリアルに感じられる。

8.松田 いりの『ハイパーたいくつ』

ハイパーたいくつ

限界社会人がうなされながら見る悪夢みたいな、限界の末の妄想みたいな小説。ドブにポリデントを放り込んだようなユーモアがあるものの、ドブの恐怖の方が大きい。逆にラストの展開やら非現実的な描写から、鬱屈しとした現実が単なる悪夢であるとして救われるハッピーエンドのようにも捉えられて不思議な感覚に陥る。

町田康のような、独特の感性でもった心理描写や情景描写がグルーヴになってラップのキラーバースが何度も続くような文章になっていて、一人の人間の頭の中で繰り広げられる妄想や葛藤の序破急を明文化したような松田節が炸裂している。

9.加藤よしき『たとえ軽トラが突っ込んでも僕たちは恋をやめない』

たとえ軽トラが突っ込んでも僕たちは恋をやめない

恋愛小説×暴力の二軸の世界が入り混じった不条理恋愛小説。
最初の話から、大学の図書室でイチャついてるいけ好かないカップルにトラックが突っ込んでくるというスカッと系の話かと思ったが、まったく毒気のない人たちにもトラックは突っ込んでいくことがわかる。

恋愛小説という1の世界に、何の脈絡もなく2の世界のトラックが突っ込んでいき、それでも話は進んでいくという、どこかそのままトラックが突っ込まずに話が続いていたらどうなっていたのか…と思いつつも、トラックが突っ込むから面白く完結したのではと思うところもあり、結果ハッピーエンドに終わる展開に謎に納得させられてしまう節がある。

10.五分目悟『真ん中のひじ掛けの妖精』

真ん中のひじ掛けの妖精

氏のYouTubeチャンネルは、シュールで現実離れした世界観を舞台に現実の痛いところを突いたようなシニカルな作風と捉えているが、氏のエッセイもどこかシュールでありながら共感を呼ぶような現実の痛い部分を突いてきている。アリの巣からダムが出来るかのように少しの共感から誘おうとしてくる文章が怖いし、どこまでが真実か不明。

 

以上。