言葉も音楽もいらなくて、ただただしんしんと外を見てる。 pic.twitter.com/LXXvBGAyz9
— 本と喫茶 もくめ書店 (@mokume_books) 2024年1月20日
これを言ったら元も子もないが、音楽を聴きすぎて耳が疲れるようなときがある。そんなときにおすすめなのが静寂である。静寂は極上の音楽である。
静寂って最も至高な音楽だと思う。
ジョン・ケージの「4:33」と言うわけでないにしろ、街中で、特に都内の人でにぎわっているところなんて常に何かしら鳴っていて、それがノイズになっている。喧騒から逃れるために耳栓のようにオーディオインターフェースに接続して音楽に逃避する。街中で静寂を堪能できる場所が少ない故に、自然を求めるが、そういう風の音や鳥の鳴き声くらいの音しかしない場所ってなかなかない。そういう場所はそもそも音楽が必要ない。ただ静寂を堪能したいだけなのである。ただし、空間を含めて。人工的で殺風景なところに幽閉されてただただ無音と言うのは忍びないからだ。
1.Simon Fisher Turner『LIFEFILES』
無調のホワイトノイズのような音が、ホワイトノイズのビートに乗ってドローン的にずっと続く。メロディがあったり音の深みがありすぎると耳もたれする時に聴きたい。死ぬ間際で流れてきそうな「LF2b」とかも良い。
2.Will Cullen Hart『Silver』
聴く静寂。ビニール袋に入れたレコーダーを裏庭に埋めて録ったフィールドレコーディング作品。ほぼ無音に近いドローンミュージックだが、時に虫が這う音や遠くからの交通音など、音楽としてと言うより音として耳を傾ける作品。捉え方的にはBGMにはできない、耳を澄まして音を楽しもうとする姿勢が必要な作品。ただ実際は音量MAXにして垂れ流し、時折かすかに聞こえる変わった音に気付きながら作業するのに向いている。集中力が高まる。
3.Frank Bretschneider『Rhythm』
1曲目からドローンのようなリズミックな低音の上をプチプチとレコードノイズなものがビートを刻んでミニマルに展開していく。キックやセンセベースの低音の鳴りが最高で集中したい時に最高なグリッチ。
4.Eliane Radigue『Jetsun Mila』
チベットと電子音楽が結びついたドローンミュージック。1曲が長いが、音が小さすぎて音量をついつい上げがちだが、耳が順応していくのでそのまま聴くのがおすすめ。途中からフィールドレコーディングのような外音と電子音のドローンノイズが融合していく。
5.Coil『Time Machines』
どの曲を選んで聞いても違いが分からないくらいにドローン。静寂に近いぐらい、むしろ室外機の音とか、夜静かにしててもどこか鳴っている空調の音と同じくらい単調で自然。聴きやすいように加工された低音ノイズって感じ。
6.Shuta Hiraki『Not Here, But There』
聴く夜。ドローンアンビエントで僅かな風や衣擦れのようなノイズ音がエッセンスとなって、やんわりと音が鳴っている感じに近い。夜眠るとき、無音の中で鳴る音をそのまま音楽化したような作品で、ピアノのような音など、楽器の音がポン出しで響いて消えていく。
7.Kate Carr『Rubber Band Music』
全体的にアンビエントな雰囲気で静かな印象だが、何かバネがはじけるような音が聴こえたり、アクセントがある。僅かな音を拾い上げてクローズアップしたようなダブ感。ジャケのような特殊な道具が音源になっているのではとも思う。
―――ローアーケース・ミュージック(lowercase)
ミニマル・アーティストのスティーヴ・ロデンによって作られた言葉で非常に静かな音で長い無音を挟んだ、アンビエント・ミニマリズムの極端な形式である。
8.Steve Roden『Forms of Paper』
再生して居rことに気付かないくらい音がしない。前述の『Silver』くらい静寂。作中の音は本を取り扱う音を増幅加工したもので、図書館のイベントのために制作されたとある。微小な音を使用したため、リマスターされた音源らしいがそれでも音は小さい。そして気付いたら終わってる。
9.Jana Winderen『The Wanderer』
作者が北極から赤道までを旅した際に録音した、大西洋に生息する植物プランクトンの水中音から作られたサウンド作品。正直、ずっと田舎の熱帯夜の虫の音みたいで気持ち悪い。音には動物プランクトンと植物プランクトンの音が収録されており、その他の海洋世物の音も混じってそう(水中音の割には水の音らしきは感じない)。
10.Miki Yui『small sounds』
インスタレーション的作品でありデビュー作。微細なノイズ、電子音を用いた作風で、ドイツ在住の日本人芸術家・音楽家。ビートの無いグリッチと言うか、あえて小さい音で再生したくなるサウンド。無音の中で「なんか鳴ってるな」と思うくらいの音量で十分。「Honolulu」は時報のような音声が流れていてなんだか白昼夢のような気分になれる。
以上。