スピッツの“ロビンソン”って、歌詞の中に「ロビンソン」って出てこないでしょ? あれ、デモの仮タイトルをそのままタイトルにしたそうなんですよ。でも、あの曲聴いたら、「ロビンソンだな」みたいな感じするじゃないですか? タイトルって、「こうです」って言っちゃえば、そう聴こえるものなんだろうなって思うので、“ロビンソン”を心の支えにして、これからも頑張ってタイトルをつけます(笑)。
普通のアルバムの中にもある(Album ver.)(Single Ver.)に続いて(demo Ver.)のような楽曲が案外良かったりする。たとえばアーティストに楽曲を提供したプロデューサーのセルフカバーのような作品。
後で探していると「ラムのラブソング」のデモ版があったのでこちらも載せておく。
―――鼻歌で作曲
日本勧業銀行で働き、出世していく傍らで音楽活動をしていた小椋佳(1966年頃?に入行、1971年:歌手デビューし、1993年の49歳時に退職)は鼻歌を録音したデモテープを作成したと言われている。
また、下記の久保田利伸のデモテープを聴いていただきたい。デモの段階から最高の歌声であることは言わずもがな、スティービー・ワンダー「I Wish」カバーなんて、ヒューマンビートボックス的なゴスペラーズ的な感じでベースやリズムをすべて口で再現して歌唱も行っている。山下達郎の「クリスマス・イヴ」の多重コーラス並みに凄い。
ちなみに、鼻歌で作曲を行うのは久保田利伸の敬愛するマイケルジャクソンも同様である。
―――味付け次第でデモテープは化ける
椎名林檎の代表曲と言っても過言ではない「丸の内サディスティック」は当初は「A NEW WAY TO FLY」という曲だった。
全曲英詩でニュージャックスイングを彷彿とさせるR&B要素の強い作風になっている。ガース・ブルックスに同名の曲があり、没案となったのちに「丸の内サディスティック」へ変貌した。
秋葉原で買ったカセットテープに入っていた曲
☟不気味な雰囲気ではあるが謎の中毒性がある。歌詞の内容がよくわからないのも相まって独特。
元を辿ればは2000年に2chで言及されていたようだが、2007年にニコニコ動画で音源が公開されてから、検索してはいけない言葉として広く知れ渡った。未だに歌手や作曲者は判明していない。
デモテープを購入した場所はラジオ会館にある店で、1990年代前半頃に購入したようだ。諸説あるが、中森明菜に提供する予定だた仮歌入りのテープだったのではないかという説が有力だ。
☟下記は秋葉原のカセットテープについて情報創作しているXアカウント。海外の掲示板redditにもこのテープに関する話題が上がっており、海外でも議論が行われている。
Hidden Track
THE MATERIAL GIRL GOES PUNK: LISTEN TO MADONNA’S RARE DEMO TAPE FROM 1979
この作品を聴くとパンクロックのような印象を受け、ニューウェーブのポップな雰囲気とは若干印象が異なる。ただこの作品はマドンナが仲間と作曲したもので、当時交際していたダン・ギルロイ、ベースのアンジー・スミット、ギターのダンの弟エドと共に歌を録音したものだ。
1979年にマドンナがカセットで自主制作したものである。その頃、彼女はニューヨークに1年ほどしか滞在していなかった。
彼女は、ギルロイの励ましと助けによってフランスに渡り、パリのディスコでダンサーとバック・シンガーとして働くことになる。
1981年には、彼女はゴッサムと最初のレコード契約を結び、あとは歴史と呼ぶにふさわしい歌声を披露している。
Hamasaki Ayumi- Nothing from Nothing 1995
有名ラッパー二人のコラボ、泉谷しげる&浜崎あゆみの日本語ラップと思われるカセットテープがたった520万円で売ってるので誰か買って pic.twitter.com/m4FqSODPdN
— takuchi (@takuchi69) 2023年5月24日
浜崎あゆみと泉谷しげるという組み合わせが意外過ぎるが、どうも浜崎あゆみはデビュー当初はラップを披露していたようだ。表題の作品はラッパーの童子-Tとのコラボ作品でAYUMI名義で発売したデビューシングル。ラップパートと浜崎あゆみの歌唱ソロパートがある。2曲目の「Limit」はAYUMI作詞でラップではなくソウルやR&Bテイストの歌唱。
浜崎あゆみはデビュー当時は清楚な倉木麻衣の類だったが、一気にギャルのイメージが高まってカリスマ性を得た。
☟ちなみに泉谷しげるは「スカ―ピープル」でラップを披露している。当時はYMOの細野や佐野元春、久保田利伸辺りがラップを披露していたが、1986年と言えばいとうせいこうが出てきてジャパニーズ・ラップのパイオニア的存在になった。
作品
リリースされた作品で言うとプリンスの『Dirty Mind』もデモテープ的な感じもする(良い意味でチープ)。
■V.A.『DEMO TAPE‐1』
坂本龍一のサウンドストリート内の「デモテープ特集」で取り上げられた音源を集めたコンピレーション。選曲は坂本龍一と矢野顕子で、高校生時代の槇原敬之(C.M.C.)やTOWA TEI。またコーナーで人気だった岡元清郎の作品もクオリティが高い。
■Rocket or Chiritori『TOKYO YOUNG WINNER』
宅録でローファイな現役女子高生ソングライターの作品。一時的に2011年に新しく作品をリリースしたが現在の活動は不明。塾に行く前の友達に演奏を手伝ってもらったとか、そういったエピソードも含めてエモい。90年代後期の宅録音源らしい雰囲気がライブ感があって小窓の付いた台所のような温かさがある。
■Moonriders『Dis-Covered』
アレンジを他アーティストに投げ出した『月面賛歌』の後発でリリースされたオリジナルリミックスでありバンドサウンド。ムーンライダーズらしいサウンド。こちらと比較して聴いてみると面白い。ムーンライダーズは気が滅入ったときに聴くと心に染み入るので良い。
☟下記で『月面賛歌』について取り上げているのでこちらも読んで欲しい。
■PiL『Commercial Zone』
1982~1983年にかけてレコーディングされたものの、アルバムリリース前にバンド解散となったためにほぼキース・レヴィンの自主製作盤となった海賊版作品。本作のテープを無視したジョン・ライドンが1から再録音して完成させたのがPiL公式4thアルバムの『This Is What You Want... This Is What You Get』(この作品以降PiLはジョン・ライドン)。
以上。