Patchwork Dream

随時、記事の加筆・修正または再掲載します。

乙女ハウスとノスタルジーの世界

乙女ハウスとは、甘い女性ボーカルの歌ものハウスである。ジャンルの命名者及び発端はTOWA TEIだとされる。

乙女ハウスという名称の由来はテイ・トウワのラジオ番組にて以下のような経緯であると語られている。

大沢伸一(以下大沢)「この辺のジャンルに名前つけたいんだけど」

テイ・トウワ(以下テイ)「じゃあオヤジハウスで」

大沢「それだと売れないよ」

テイ「じゃあ乙女ハウスで」

dic.nicovideo.jp乙女チックだという音楽的特徴がありで、近年で言うところのKawaii Future Bassみたいなものである(こちらはUjico*氏が自身のSoundCloudにてKawaii Future Bassタグをつけたことから始める)。
☟「Kawaii Future Bass」についてはnoteにてまとめている方がいたので下記noteを参照。

note.com

上記noteでも触れられているが、乙女ハウスと言ったら中田ヤスタカのユニットCAPSULEの初期もこれに当たるだろうが、実際はハウス的な要素よりもゲームや渋谷系っぽさの要素の方が大きくサウンドもスタイリッシュになる前のサウンドなので何とも言い難い感じだ。

そもそも乙女ハウスと言うジャンル自体、2005年をピークとして2000年代に流行ったもので、今は旬ではない。なぜそれを取り上げるかと言えば、Y2K美学に基づくノスタルジーである(下記の記事に触発されたからだ)。

block.fm

上記記事ではこれを"NEO TOWA TEI"と提唱しており、下記プレイリストを公開している。

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当方、俺もTOWA TEIは1ファン、リスナーとしてよく聴いているが、氏が最近リミックスしたソトシゴト、tofubeatsの「REFLECTION(feat. 中村佳穂)」なんか「Last Century Modern」時のような2000年前後の頃のようなリミックスが施されていてエモい。なんか今までのTOWA TEIっぽさが蓄積されたような雰囲気で、後半のホーンが加わってくるあたりで近年の氏のような雰囲気も出てくる。

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このリミックス自体がもう乙女ハウスにはなっているが、先ほどの記事でも触れられていたbalaなんかは大沢伸一プロデュースであり、氏もまた乙女ハウスのプロデューサーの1人と言える(冒頭の乙女ハウスの由来においてTOWA TEIとラジオで会話していたし)。

☟近年でも満島ひかり齋藤飛鳥、やくしまるひろこ等をプロデュースしている。

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俺はまた大沢伸一及びMONDO GROSSOリスナーでもある。初期MONDO GROSSOのようなアシッドジャズやサンバ・ボサノヴァといったラテン系の時期も良いし、「NEXT WAVE」以降のハウス期も良い(当作ではTOWA TEIをコープロデューサーとして迎えている)。そして、近年のクラシカルでミュージカルチックなMONDO GROSSO。そしてヒップホップ路線もプロデュースしている大沢伸一及びRHYME SO。
ただ大沢伸一のプロデュースしていたディーバ達はbirdやUAChara等であり、TOWA TEIの提唱する乙女ハウスっぽいキャピキャピ感は少なく、大人っぽいジャジーな作風が多い。

☟ハウス期のMONDO GROSSOの「Everything Needs Love feat. BoA」は最近日本語バージョンでセルフカバーされている。これはとても乙女ハウスっぽい。

2002年に当時15歳だったBoAを フィー チャーしたハウスミュージックの名曲「Everything Needs Love feat.BoA」が19年 の 時を超え、再びBoAにより日本語歌詞でレコーディングされたニュー・バージョン

www.youtube.com

下記にていくつか乙女ハウス作品を羅列していくが、ほとんどが2003年から2006年の作品である。そこが乙女ハウスの全盛期であると言える。

―――乙女ハウスの"スタイリッシュなおしゃれ感"

下記はTOWA TEIのワークス集であるが、ここでもいくつかの乙女ハウスが収録されている。

TOWA TEI『ARBEIT』

ARBEIT

Disc-1の5曲目、唐沢美帆「2PM」(2004年)なんかも音がキャピキャピしている。歌詞からもキラキラした乙女ライフを横臥している印象を受ける。

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Disc-1の6曲目、LEE JUNG HYUN「BRIGHTER THAN SUNSHINE」(2002年)もタイトルから察してもキラキラしている。求めているのはこういう音である。キャピキャピ、キュピキュピ、ピコピコしたサウンド、キラキラした感じ。これが乙女ハウスなのだ。

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■FPM『beautiful.』

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2001年作。TOWA TEIと並んで渋谷系として雑誌に紹介されてきたFPM。「BEAUTIFUL DAYS」から最高の走りだしで最高の乙女ハウス。デュエットの作風で、明るく軽快な感じが良い1日のスタートを彷彿とさせる。Frankie Knuckles 「WHISTLE SONG」のカバーもあり。

m-flo『ASTROMANTIC』

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2004年作。やっぱ子供のころから好きで聴いていたのはm-flo。LISAの歌、Verbalのラップ、Taku☆のビートの三つ巴が最高にオシャレで、ラップに怖いイメージは無く、高尚な音楽だと思っていた。もちろんLovesシリーズも好きで、以降のプロデュース能力が凄い。BoACrystal Kayなど有名無名問わず最高のトラックに仕上がっている。今はまた3人になって活動してるがEDMっぽくなってしまったのが悲しい。Taku☆にはまたあの頃のようなビートを作って欲しい。

■MJ Cole『Cut To The Chase』

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2003年作。2ステップガレージ中心で、2000年初期の☆Takuのビートような雰囲気がある。日本のアーティストのリミックスも行っておりSMAPや前述のTOWA TEIの別名義Sweet Robot Against The Mashine「Free」のリミックスも手掛けた。

CAPSULE『PLAYER』

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2010年作。CAPSULEの2000年初期はほぼほぼゲームミュージック渋谷系っぽい(ピチカートファイブっぽい)感じだったが、2010年前後辺りから急にサウンドがバキバキになり始めた。「Hello」なんてTOWA TEIっぽいピコピコ感。

―――乙女ハウスの"ゴージャスなサウンド"

Rasmus Faber『Ever After』

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2003年作。日本国内において乙女ハウスブームの立役者とされるのがラスマス・フェイバーであり、この楽曲はその一部である。しっかりとクラブ系の作品でハウスだが、ディスコディーバほどソウルフルな歌唱ではなく軽やかに歌っている感じが特徴と言えるか。

■Booty Luv『Boogie 2Nite』

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2006年作。イギリスの女性デュオ。良い意味で一昔前のEDMみたいなサウンドって感じがしてエモい。ラスマス・フェイバーと並んで国内での乙女ハウスブームに一役買ったグループ。この作品を聴くと、乙女ハウスブームは90年代のハイパーテクノブームのような感じなのかとも思う。

片瀬那奈『TELEPATHY』

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2003年作。「A・I・O」が最高過ぎる。ハウスのMONDO GROSSO大沢伸一プロデュース作品的なフィルターハウス仕様になっていて、小刻みなシンセのリフレイン、くぐもったサウンドからフィルターがオープンになって行く効果などは近年のbalaと同じ展開。20年越しのリバイバルが起きている感じがする(この点についてもJun Fukunaga氏が取り上げている)。

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www.jfmusicwritterclass.com

MONDO GROSSOMONDO GROSSO best remixes』

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本作収録の「DO YOU SEE WHAT I SEE (DEEP ZONE MIX)」のグルーヴィさが最高。もともとアシッドジャズ路線だったがリミックスによってクラブジャズ感が高まり、ハウスチックな作品となっている。本作は2004年作であり、2000年リリースの名盤『MG4』のその後であり、ハウス路線へ赴いた2003年リリース『NEXT WAVE』のその後である。ジャズとハウスの双方の要素が取り入られた作品と言う印象。

■DJ KAWASAKI『BEAUTIFUL』

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2006年作。ジャケットが女性の画像なのも良いが、表題曲のジャジーなコードにサビの「Beautiful」のボーカルが最高。ゴージャス感で言うと大沢伸一と同様の雰囲気を感じる。

☟プロデュースを手掛けた藤井リナの作品も同様にオシャレでゴージャス、少し切なさを感じる仕上がり。

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Studio Apartment『World Line』

Studio Apartment – World Line

2004年作。MONDO GROSSOのようなラテン的ブラジルっぽい路線の作品でMG4のような雰囲気。「Flight」「Life From The Sun」など、ストリングスやギター、パーカッションがサンバやボサノヴァのそれ。観葉植物が置いてある少し暗めな店内のカフェやビアホールで、テラス席に座って屋台やら海を見ながら風を感じたい作品。

〈番外編〉

松井五郎プロデュース Bohemian Quarter『Blister Pack Voices』

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2005年作品。本作は作詞家の松井五郎が通常の歌モノやボイスドラマなどではない、ハウスミュージックにセリフを乗せた新たな試み「ポエトリーミュージック」である。ゲームのサントラっぽく、岩澤瞳在籍時のSPANK HAPPYっぽくもある。声優を起用しており、別視点で見た乙女ハウスと言ってもおかしくない印象はある。

■FANCYLABO『Flash Light』

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近年アイドルへの楽曲プロデュースを行っているDJのNight Tempoも今プロデュースを手掛けるFANCYLABOは80年代チックなレトロのエレクトロサウンドを醸し出しており、乙女ディスコと言った雰囲気の作風となっている。

浜崎あゆみ『Remember you』

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久しぶりに浜崎あゆみを聴いたが、まったくもって良い意味で当時のままのようなサウンドがかえって感動する。乙女ハウスではないだろうが、レイブのようなトランス感ある女性ボーカルはもう浜崎あゆみじゃないと聴けないのかもしれない。

☟このまとめも数少ない乙女ハウスをまとめた記事だ。どれもこれもエモいし、こういったムーヴメントは人によって定義が違かったりして面白い。

https://www.tumblr.com/pizzicatoaibu/132198677260/otomehouse2015

pizzicatoaibu.tumblr.com

 

以上。