BGMとして、インストのそれらしい落ち着いていてシンプルな音楽が店内であったり、街中の至る所で流れていたりする。ただ実際のところ、我々が外で聴く音楽というのは、出勤前にボルテージを高めるための曲や自分の世界に浸るための曲として、ロックだったりポップスだったという歌モノの作品が多い。そして、店内BGMもほとんどは流行り物の音楽であり、歌モノである。我々がBGMと呼んでいる音楽こそ一般にBGM的な使われ方をされなくなっている。たとえば、集中する時に流すものだったり、家で籠って聴く、つまり結局音楽に集中して聴き込んでも耳が凭れないような自然な音であり、空間作りとして優れた音楽をBGMのような蔑称で呼んでいる形となる。BGMという扱われ方はよろしくないかもしれないが、このように決して悪いニュアンスでは無いのだ。
1.Jean-Jacques Perrey『Moog Indigo』
ペリー&キングスレイとしてリリースした「Baroque Hoedown」はディズニーのエレクトリカル・パレードで有名だが、本作もそんな感じの雰囲気の楽曲で構成されている。ムーグシンセの音色は効果音としても面白くて、「E.V.A.」のスペース・ファンクはカッコ良いグルーヴ感がある。「The Elephant Never Forgets」もキャッチーなメロディーで途中のSEも良いアクセントになっている。
2.Danny Boy Et Ses Pénitents『Le Twist De Schubert』
全体的に録音の伴奏が霧掛かったような感じだが、全体的にバカンスのような陽気な雰囲気。「Stop!」はFPMの1stでもサンプリングされたキャッチーな作品。南国の地で聴きたいぐらい音楽に温度がある。
3.Stu Phillips『Follow Me (Original Soundtrack Album)』
1969年公開のサーフ・ムービー『Follow me』のサントラ作品。1局自体が短いのに、かわりんぼ飴のように途中から全く異なる曲が始まるような展開が繰り広げられる、クラシック的な構成になっている。「Portugal : Guincho」の落ち着いたチル系のイントロからいきなり早歩きで進むような急展開。最後はまた落ち着いた雰囲気のメロディに変わる。夕日は似合うが、サーフィンというよりフラメンコとかダンスっぽい情熱が感じられる作品。
4.Luke Vibert『Luke Vibert's Nuggets - Volume - 3』
ワゴン・クライストとしても知られるルーク・ヴァイバートのエレクトロ作品。70~80年代っぽいエレクトロ感だが実際は90年代。本作では異色なコーラスのみのゴスペル的作品「In Close Harmony」なんか爽快感が凄い。全体的にラジオの天気予報のBGMみたいなサウンド。「Silicone Chip」好き。
5.The Mohawks『The Champ』
表題曲が最高なのはそうだが、全体的に明るく愉快な雰囲気なのが良い。
6.The Sweet Enoughs『Marshmallow』
南国でのバカンスのような、南風を感じるゆったりとしたバレアリックサウンド。夕暮れ時に聴いて一日をリセットしたい。リラクゼーションサポートドリンクのCHILL OUTみたいに、エナジードリンクの逆。これを聴いたら何かを使用とかどうでもよくなる。「Cerberus」最高。
7.Nancy Ames『Latin Pulse』
オールドなラテンはオシャレで老舗な雰囲気が良い。ビッグバンド的な豪快な曲もあれば、ビートルズ「Ayer (Yesterday)」のしっとりスロウテンポでのカバーもある。
8.The Cyrkle『The Minx』
低予算エロ映画のサントラ。雨が上がった昼下がりに聴きたいラウンジ感。ソフトロックで、ボサノヴァやサイケを感じさせる作風。
9.Manfred Hübler & Siegfried Schwab『Vampiros Lesbos: Sexadelic Dance Party』
完全インストでわずかに人の声が入っている程度。シタールだったり謎の静電気みたいなビリビリしたサウンドが特徴的。ダラダラと流し聴きしてるとあっという間。
10.Enoch Light And The Light Brigade『Spaced Out』
「Lover's Concerto」やビートルズ楽曲、バート・バカラック「Bond Street」のカバーなどを収録した作品。オリジナルも数曲。ガーション・キングスレイのシンセ作品のような「Ob-la-di, Ob-la-da」も良い。全体的に60年代のスペースエイジ音楽と言う感じ。
以上。