☟下記BOOTHにてボーカロイドなどの合成音声についての記事をまとめたムック本のようなものが販売されている。
日本史の教科書に初音ミクがのる時代… pic.twitter.com/VaMH4CFPQ5
— のんち (@non_A1207) 2018年9月18日
今思うと、これはバーチャルYouTuberじゃなくて初音ミクの強みだったんやなぁ… pic.twitter.com/aXqI8NRH3a
— ウィリアムEB. (@WilliamEB1) March 29, 2022
初音ミク以前の合成音声ソフト
―――竹村延和
柴:そういうところは絶対あると思います。初音ミク開発者の佐々木渉さんは、エレクトロニカとかアブストラクトミュージックといった音楽のマニアで、そもそも初音ミクに携わるつもりはなかった。クリプトンは音響系の制作に使うようなマニアックな音源サンプルも出していて、その解説とかマーケティングの仕事をしようと思って入社してきた人なんですよ。そうしたら、ある日、竹村延和さんから、初音ミク以前の海外製ボーカロイドソフトに対する猛烈なクレームが来たそうなんです。佐々木さんにとって、竹村延和さんは憧れのアーティストで、そういう人にここまでダメ出しされてしまったボーカロイドを自分がなんとかしたいという気持ちが、初音ミクを開発する最大のモチベーションだったそうです。ですから、そういう意味でも初音ミクって90年代、2000年代のテクノ、エレクトロニカの正統な進化形なんですね。
竹村延和さんは2002年にスピーチ・シンセサイザーでアルバムを1枚作っています。それは「10th」というアルバムで、その時点であったスピーチ・シンセ、その機械音声の波形をいじってメロディにして、歌わせるみたいなアルバムを作っていたんですね。そういう人なので、ボーカロイド的なものに当然興味を持つわけです。シンセサイザーの進化でピアノもギターもドラムも再現できるようになってきた、その先の、最後に残された聖域としての“声”というところを、ヤマハの剣持さんも佐々木さんも「進化のフロンティア」として捉えていた。ですから、初音ミクの背景にはシンセサイザー開発史と、テクノ・エレクトロニカ史があるんです。
■竹村延和『10th』
―――TOWA TEI
ちなみに、TOWA TEI氏も合成音声ソフトを使用している。
●CHATR
テイ・トウワ氏が『Last Century Modern』で使った、マルチリンガルな発声プログラム「CHATR」(チャッター)のように、あらかじめ任意に数百のキーワードを読み上げて記録しておき、テキストを入力するとまるで本人の癖そのままに文章を読み上げる、ワークステーション用のソフトも登場した。「CHATR」はマルチリンガル対応がウリで、テイ・トウワ氏は韓国語のモノローグを入れていたが、その後ペ・ヨンジュンの映画かなにかで、ヨン様の声を解析した合成人声が日本語で喋る副音声が入っているDVDがあったと思うので、それも「CHATR」が使われてたんじゃないのかな。
● TexasInstruments「Speak & Spell」
アメリカの半導体メーカー、Texas Instrumentsが1978年に発売したSpeak & Spellは、子どもが英語のスペリングや発音を学習するための教育玩具。同社製音声合成チップ TMS5100を搭載、リアルタイム合成によって言葉を発するのが大きな特徴で、世界的大ヒット商品になりました。
☟冒頭の合成音声がこの音声だ。
●コエステーション
冒頭のテイ氏の合成音声「君は僕を素晴らしいと感じさせます」はこのコエステーションからサンプルした音声だ。
―――平沢進
問:ボーカロイドの次回起用は何十年後でしょうか?
— Susumu Hirasawa (@hirasawa) 2017年1月8日
答:ボーカロイドはしばしば使っておりますが、気付かれないだけです。
Q:MEIKOは良くてミクやKAITOがダメな理由を教えてください。
— Susumu Hirasawa (@hirasawa) 2018年1月3日
A:オマエタチはコラボという言葉を誤って使っている。「ユニット」もだ。「ユニット」の誤用に至ってはダサくて死にそうだ。
私は時にヴォーカロイドを楽器あるいは道具として使用するのであります。これはコラボとは言わない。
☟下記ユリイカのインタビュー内で平沢氏がボーカロイドの使用について話している。
●LOLA
平沢氏が使用しているソフトはLOLAという2004年製のソフトで「白虎野の娘」「確率の丘」で使用されている。
☟下記2004年作の『白虎野』内に上記2曲が収録されている。
P-MODEL解凍期の2作品ではこのAmigaの機械的なボイスが楽曲の各部分に使用されている。
―――ゆっくりボイス
ニコニコ動画などで使用されている、ゆっくり魔理沙とゆっくり霊夢による「ゆっくりボイス」はSofTalkというフリーのソフトの音源を元に作られている。
☟下記の様にゆっくりボイス=SofTalkの音声を使用した楽曲も存在する。
初音ミクの誕生
下記の記事にもあるが、初音ミクの声は声優の藤田氏からサンプリングしたものだ。歌声合成ソフト『VOCALOID2』にアバターが作成され、初音ミクとしてパッケージ化・リリースされたのだ。
藤田咲 そうですね、オファーは同時期でした。収録は発売順通り、私のほうが少し早かったと記憶しています。
左から藤田咲、下田麻美。
下田麻美 私が収録することが決まったときには、もう咲ちゃんの収録は終わりかけくらいだったと思います。「初音ミク」という名前もまだ決まっていなかった中で、「これが藤田さんの歌声です」と、サンプルを聞かせてもらって。曲はなぜか「およげ!たいやきくん」(笑)。「MEIKO」(2004年11月発売)や「KAITO」(2006年2月発売)がもうあったにせよ、まだ音声合成のソフトは一般的ではなくて、「こんなにきれいに歌うんだ!」と感動したのを覚えています。発売後、ミクちゃんはすぐに人気者になったので、名前がまだない、私が録っているこのキャラクターはちゃんと受け入れられるのかな……って、期待よりも不安が大きかったですね。
―――2007年から10年の時を経て
調べてみた。一番古いミクオリジナル曲の投稿が2007年9月9日。それから2017年8月31日まで3645日間。うち3644日にミクオリジナル曲が投稿されてた。投稿がなかったのは2007年9月14日だけだったので,15日以降は約10年間毎日初音ミクの新曲が投稿されてたことになる。
— myrmecoleon (@myrmecoleon) 2017年9月1日
当方ボカロ楽曲や歌い手などのネット音楽には疎く、学生時代は初音ミクなどの楽曲が少し大人びた音楽だったり、通な音楽として中二病じみた同級生が給食時に流す音楽であった。とは言え、少し聞きかじってみると様々なジャンルがあり、中毒性が高いものが多い。当時はもう既に初音ミクだけでなく多様なボーカロイドソフトで溢れていて、ブートレグな界隈からいくつもの名曲が生み出された。
2007年に「始まった」ものをあげてみようと思う。
・iPhone。最初のiPhoneが披露されたのは、2007年1月9日に開催されたアップル製品の展示会でのこと。
・USTREAM。一般向けベータ版のサービスが開始されたのは、2007年3月のこと。
・ニコニコ動画。前年12月に実験サービスとして始まっていたが、本格的に『ニコニコ動画(β)』としてサービス開始されたのが2007年1月15日のこと。
・ボーカロイド。クリプトン・フューチャー・メディアから「初音ミク」が発売されたのが2007年8月のこと。
・ナタリー。日本の音楽ニュースサイトの代名詞的な存在になった「ナタリー」が開設されたのが2007年2月のこと。
・soundcloud。今では数多くの有名アーティストがアカウントを持つ音楽の共有サービスがベルリンで創業されたのが、2007年8月。
―――ボーカロイドで統一される音楽
佐藤:最初はこれは面白い文化だなと少し離れたところから見ていたんですけど、
実際にボカロシーンの中に入って、ボカロ関係のイベントに遊びに行ったりすると、
すごい一体感があるんですよね。例えばバンドだと、みんなバラバラなライブハウスで、
バラバラなジャンルでやってて、やってる方もお客さんも、違うジャンルのバンドだと
ほとんど出会わないじゃないですか?同じジャンルでもけっこう難しい。
でも初音ミクとかって、全く違うジャンルのものでも、ボカロってだけでみんなちゃんと聴くし、
作ってる方もすごい仲間意識があるというか、つながりがあるんですね。ジャンルごとに
バラバラに孤立していったものが、ボカロっていう共通言語でゆるくつながっていて、
そういうモデルに可能性というか、希望を感じたんです。
―――初音ミクとコラボするアーティスト
●BUMP OF CHICKEN feat. HATSUNE MIKU「ray」
●小室哲哉 feat. 初音ミク「LOVE IS ALL MUSIC」
●安室奈美恵「B Who I Want 2 B feat. HATSUNE MIKU」
ボカロPがJ-POPに並ぶ時代
●ハチ「パンダヒーロー」
言わずと知れた米津玄師のボカロP時代の楽曲であるが、ボカロと言うインターネット上でのインディーズ音楽がポップスの棚に並びドラマの主題歌となるような超有名シンガーソングライターとなった。元Pなので、これからもっとプロデュース面でも幅を利かしていくだろう。
●トーマ「バビロン」
こちらも米津同様に音・詩・絵をすべて自分で制作するという強者だが、やはり曲調が独特な部分も含めてかなり面白い。米津程メジャーではないが、同様にGyosonとして本人歌唱でデビューしている。本当にボカロP時代のトーマを好きな人でないと気付かないサジェストでGyosonにたどり着くことができるが、SpotifyではTohmaと打つとなぜかGyosonが出てくるのだ。
初音ミク以降のボーカロイド・合成音声ソフト
UTAUとボカロの違い、そして結月ゆかりがゲーム実況いっぱい出てる理由であるボイロの説明画像まとめ pic.twitter.com/PbSCImjw93
— ナルパジン (@narupajin) August 14, 2016
―――CeVIOが生み出した音楽的同位体
●可不
こちらはキャラデ原案です!いっぱい描いても欲しい!
— PALOW. − 𝗦𝗦𝗦 (@PALOW_) 2021年7月7日
ちなみに、インナーとても気に入っています。 #AI可不 #AI_KAFU pic.twitter.com/dvv8xIWYpz
近年では可不という一種のボーカロイドソフト?のようなアーティスト(音楽的同位体)が出現してきた。
下記の様に単独でアルバムがリリースされているのが凄いところではある。
☟特に下記の「マーシャル・マキシマイザー」は人気がかなり高い。
―――バーチャルシンガー
元となるのが花譜というバーチャルシンガーだ(おそらく近年引退したキズナアイ同様担当者がいるのだとは思う)。ちなみにプロデュースはボカロPのカンザキイオリ氏。
☟下記で本人が可不とコラボしているので歌い方に注目してほしい。声はほぼ同じである。
バーチャルシンガーと言えばAdoもそうなのか?と思うが、おそらくその辺の線引きがあるのだろう。覆面系シンガーの古参と言えばタイマーズやGReeeeNもそうであり、近年のMAN WITH A MISSIONやヨルシカもそうだろう。
ポスト・ボーカロイド楽曲
■Puhyuneco『Puhyuneco』
タイトルもジャケットもボーカロイド感のないエレクトロニカっぽい雰囲気だが、箱を開ければ今風のシンプルでおしゃれなメロディ。
■yanagamiyuki『My name Is』
初音ミクのラップ(しかもトラップ、マンブル風)が斬新すぎるし、途中途中の平沢進っぽいSE(男の人の声)も相まって荘厳な感じがする。無限に聞いていられそうな心地よい声とリズム。
■井ナカノセ『空間はきみで』
大人しめのPerfumeのようなシンプルで洗練されたダンストラックにリバーブの掛かった電子ボーカル。初音ミクとVoiSonaの知声(Chis-A)というAIシンガーが歌っている。新しいような懐かしいようなサウンドを体感できる。
■KAIRUI『海の名前』
新海誠監督作品のような清々しさと海に潜っているかのような独特なビートと音色。初音ミクのボーカルが結構合う。
■稲葉曇『ウェザーステーション』
シンプルな音にキックの鳴り、シンセの響きが良い。小学生をコンセプトした歌愛ユキというボーカロイドを使用しているようで、全体的な内容も学生チックな雰囲気がする。
☟「ラグトレイン」は再生数がえげつないが、確かに中毒性のあるキラーチューンだ。
☟歌い手によるカバーがあるが、PVまで再現していて良い。イラストが可愛らしい。
■青屋夏生『浴室』
ジャジーでおしゃれだし、途中でテンポが変わるのもかっこいいし、初音ミクがボーカロイドであることを忘れてしまうほど自然にマッチしているし普通にポップスだ。
■平田義久『この夏のすべてL.P.』
オブスキュアな雰囲気でシティポップなボカロ作品。トラック自体は生っぽい雰囲気で構成されている。夏をテーマいしているが、まるで久石譲の北野映画サントラのようなオーケストリングが映える「灯ろう流しの夜」は最高なインスト作品。
■ancou『MIKUMIN』
初音ミク×民族音楽のエッセンスで幻想的なテクノに仕上がっている。ディレイラマのように楽器として初音ミクを使用している。ただ歌わせる以外にこういった使い方ができるのがボカロの持ち味ではある。
■螟上?邨ゅo繧『人を謳う人 弐』
ボカロ作品らしからぬ生っぽいトラック。ポストパンクやシューゲイザーのような、オルタナのような、ナンバーガール系列のようなサウンドでハードコアな印象。文字化けのようなアーティスト名も相まって、歌詞も意味深く感じてしまう。
以上。