ビールが美味しいのは奥田民生。日本酒や焼酎が美味しいのは吉田拓郎だ。どちらも男らしい不器用ながらカッコの付く生き方だ。見た感じもちょっと似ているし、チャック・ベリーのギターリフ的なサウンドだったり、音楽的にも似た部分を感じる。どちらも無骨に歌う姿がカッコよいが、力の抜き加減では真逆ではないか。
奥田民生
最近は立川談志のようなビジュアルで活躍しているが、THE FIRST TAKEへの出演、海外映画『ブレット・トレイン』の挿入歌「Kill Me Pretty」を熱唱するという大活躍ぶりだ。
■奥田民生『29』
「ルート2」狂気交じりのラブソング「ハネムーン」に、「愛する人よ」「愛のために」のように全体的にラブソング多め。勢いのある「BEEF」も最高。
■奥田民生『30』
サタデーナイトフィーバーっぽいジャケの2nd。「人間2」は暗い感じでベースが入るが若干ファンクやディスコっぽい感じで、民生の声もカラオケで熱唱しているような雰囲気。カントリーっぽい「トリコになりました」や最高の民生節の「人の息子」60年代ガレージパンクっぽい「MADONNA de R.」。民生っぽくない歌い方の「厳しいので有る」も良い。
■奥田民生『股旅』
「恋のかけら」は「愛のために」の一歩手前のような雰囲気で、恋は一瞬だが愛は完結せずに続いていく感じで終わるのがまた良い。「遺言」はタイトルの割にキャッチーな歌なので、爺になったときにでも歌っていたい。「さすらい」は最高。これを聴いてバイクにまたがりたい。「イージュー★ライダー」は97年版の方が好き。
■奥田民生『FAILBOX』
ニューヨークで録音された作品。「カヌー」のゆったりとしたメロディーと歌い方が心地よい。「陽」は暗めで渋いフォークソングのような雰囲気。
■奥田民生『GOLDBLEND』
「荒野を行く」はドラム隊も相まって西部劇のような雰囲気が良い。スピッツぽい物を作ろうとしたベンチャーズ風味の「マシマロ」は音程が一定でフラットなのでそこも相まって中毒性が高い。「ウアホ」のラウンジ感。「近未来」はこの中でも奥田民生感が高い。「トロフィー」のクライマックス感。
■奥田民生『CAR SONGS OF THE YEARS』
「ガソリンガタリン」でまず燃料補給から始まるスタート。最初は飛ばし過ぎないでCM曲にもなった「And I Love Car」で軽やかに走行。カセットテープに吹き込みたい名曲「イージュー★ライダー」収録。
■奥田民生『E』
個人的にハマる曲が多く、奥田民生作品の中で最もコンビニに行きたくなる作品。休日に行く複合施設のショッピング感。「花になる」は今までの民生っぽい王道曲。「御免ライダー」はイントロからマフラーが鳴り響いていて良い。「哀愁の金曜日」の今日で今週の仕事終わるし感ボルテージが高い。「家に帰れば」の哀愁漂う感じ、夕暮れ時に聴きたい。そして「CUSTOM」「The STANDARD」「ドースル?」のクライマックス感。
■奥田民生『LION』
「スカイウォ-カー」の浮遊感と全能感が凄い爽快で快晴の道を散歩しながら聴きたい。「歯」みたいなタイプの相田みつをの詩的な曲も良い。「サプリメン」の物語の幕開け感と群像劇的な陸続きの多様的なストーリーが良い。「青春」はただ素晴らしい部分ではない悩んでいるうちが花な青い尊さを描いていて良い。
■奥田民生『O.T. Come Home』
「ちょっとにがい」のサビでのベースが良い。ほぼA→サビの繰り返しだがそのテンポが良い。「風は西から」は往年の民生感。「拳を天につき挙げろ」も民生感があって良い。民生感の強い楽曲はビールが美味く飲めるので最高。
■奥田民生『サボテンミュージアム』
「エンジン」での民生の張り上げが凄い。民生の声がマフラー音となって曲を加速させていく。60年代ガラージュ的な「俺のギター」はシンプルな歌詞ながら完成されている。「白から黒」はダークでメロウな雰囲気ながらもオシャレな夜の街が浮かんでくる。「歩くサボテン」は一歩一歩踏み出しているようなローテンポさと砂漠の暑さを感じる。
吉田拓郎
ボブ・ディランがノーベル文学賞を受賞したが、和製ボブディランとも呼ばれた吉田拓郎の作品は文学的だと思うし、小説の一章を読んでいるような気分で楽曲を聴いている。曲に先行してしまう自分でも思わず耳を傾けて声を聴いてしまうアーティストの一人だ。曲ももちろん良いが、ギターに乗せた拓郎の声が聴きたいのだ。流石はOTのOB、母校広島皆実高校の先輩である。
■吉田拓郎『ah-面白かった』
年内活動休止予定で、ラストアルバムとなろう『ah-面白かった』がリリースされた。タイトルが「面白かった」なのが最高だし安心した。「ショルダーバッグの秘密」のイントロは民生っぽさを感じる。「アウトロ」の前向きさと青さが良い。「Together」ではラブラブ愛してるのKinKiの2人と篠原ともえの名が挙げられている。
「元々外食嫌いということもあり、コロナ禍ではほとんど家から出ることはなかった。アルバム制作もスタジオで作業するスタッフと、自宅から電話でやり取りをして進めていました。ようやくスタジオに入ったのは今年3月、ボイストレーニングを行うためです。レコーディングには、長年親交が続く数少ない音楽仲間の小田和正がボーカルで参加し、キンキの堂本剛もアレンジとギターで参加しています」(同前)
■吉田拓郎『元気です。』
落ち込んだ時、一時期フォークを聴いていて、結構暗い曲も多いのでより気分が落ち込む場合もあるが、これは1曲目の「春だったね」から救われる。イントロから春風が吹いているし、意気揚々と玄関から駆け足で急いでいる。ギターと吉田拓郎の無骨な歌声に一貫した安定感があるし、気分が落ち込んでる時も高まってる時も聴いていると落ち着く。極端にアップテンポ・スローテンポではないので起伏が激しくないのが良い。こんなに渋くて落ち着いた「夏休み」なんて今の時代あるか?ギターがカッコ良い「高円寺」や「リンゴ」、老舗旅館で聴きたい「旅の宿」。
■吉田拓郎『人間なんて』
ここで本人作詞作曲の「人間なんて」では「人間なんてラララ…」と曲中では何もはっきりと明言していない。ただ人間の抽象的で言葉にできないモヤモヤを音楽というニュアンスを含んで上手く表している。拓郎が作らなくてもきっと誰かが作っているだろうし、既に作られていただろう。79年のライブでの「人間なんて」のインパクトったら凄まじい。アレンジもさることながら、観客が「人間なんて…」と盛り上がる中、歓声を浴びる吉田拓郎は革命家のように映っている。
■吉田拓郎『ローリング30』
思い切り70年代後半から80年代初頭にかけてのニューウェーブ的歌謡曲。全体的にボリュームが多い。シャウトめいた「ローリング30」も良いし「裏街のマリア」は時代を感じるニューウェーブっぽいロック。「外は白い雪の夜」も良いが、夏をイメージして聞いていたので衝撃。陽気な曲としみじみとした曲の両方が交互に来る感じ。
■吉田拓郎『マラソン』
個人的に拓郎がYMOに影響されて打ち込みを使用したという『マラソン』が一番好きかもしれない。「あいつの部屋には男がいる」は始まりから青春ドラマだ始まっている。「友と呼べれば」も渋くてカッコ良いし、ビリー・ジョエルのようだ。最後の「マラソン」はアルバム全体的な印象とは違い、バラードっぽく落ち着いている。
■吉田拓郎『176.5』
あの「落陽」がアルバムとして正規に入ったが、やはり名曲。イントロの入りから天才的だし、情景の表し方が男が憧れるさすらい方。「俺を許してくれ」のドラマ感は映像として見なくてもすべて拓郎が代弁してくれている感がある。
■吉田拓郎『detente』
「放浪の唄」の男の船出的なスタートから「たえなる時に」でしんみり。「ロマンチックをおくって」のテンションはローカル旅番組のバラエティ感があって気分が上がる。80年代青春劇のような雰囲気の「男達の詩」。
■吉田拓郎『歩道橋の上で』
ジャケで拓郎が着てる服のパンチとは裏腹に全体的にちい散歩並に落ち着いた作品。ギターがカッコ良い「沈丁花の香る道」と珍しくタンゴの「街角のタンゴ」。最後に「秋時雨」を聞いて帰宅出来れば最高の散歩のお供。情景描写が素晴らしい。
☟KinKiKidsへ送った「全部だきしめて」も最高。Bメロが早口で歌いづらいが本人が歌ってもちゃんとマッチする。
以上。