1.湯浅譲二『ピアノ作曲集/テープ音楽集』
前半「内触覚的宇宙」から「オン・ザ・キーボード」まではピアノ作品で、ピアノのみで複雑な音色を奏で続けていたと思ったら「スペース・プロジェクションのための音楽」が始まって、ビートルズの「Revolution 9」みたいな感じの曲が続く。MADテープみたいな「ヴォイセス・カミング」とかは面白い。
2.Merzbow, Nicolas Horvath『Pia-Noise』
ノイズの海の中をピアノが泳いでいく作品。眠気が出てくる昼過ぎから夕方にかけて、カーテンを締切って電気を消して昼寝してる時に聞くと調度良い。
3.藤枝守、銅金裕司『エコロジカル・プラントロン Ecological Plantron』
夕方から夜を開けて昼過ぎまでのタイトルがつけられた作品。インスタレーション的作品で、マックPCを使い、MAXプログラムによって作成されたFMシンセの音がクセナキスのようなアブストラクトな音を出しているが、音色はマリンバや打楽器のような感じでガムランっぽい。
『エコロジカル・プラントロン』(1994年)はこの「プラントロン」の最初のCD記録集である。銅金の「プラントロン」を作曲家の藤枝守のサポートで本格のインスタレーションに構築したもので、植物と人間環境の往信から生まれた電位変化がMIDI変換され、「MAX」プログラムを通して不定形かつ不規則なYAMAHAのFMシンセ音となって放出される。強引に例えれば、クセナキスやペンデレツキの図形楽譜曲にどこか似た雰囲気、あるいは予測不能な電子音を垂れ流すコンロン・ナンカロウといえるかもしれない。
生態電気といえばヒトの脳波を使ったデヴィッド・ローゼンブームやアルヴィン・ルシエ、ヤン富田らの実験音楽が思い出されるが、本作は人間が主役ではなく徹底して植物中心主義で、そもそも近代的な意味の<音楽作品>として提示されていない。
4.Zweistein『Trip • Flip Out • Meditation』
ジャーマンロック70年作であり最初で最後のアルバム。ビートルズの「Revolution9」を煮詰めたようなサウンドで、子供の話し声やら何かのレコードのロックが時折流れる。ナースウィズウーンドや暴力温泉芸者のようなサンプリングとノイズのミュージックコンクレート作品。演奏してる姿がイメージ出来ない。
5.佐藤聰明『太陽讃歌』
滝のような2台のピアノの音が織り成すトレモロがミニマルに響き渡る「リタニア」「太陽讃歌」。しずくが滴ってやがて落ちていくような静謐でシンプルな単音のメロディの「鏡」。
6.Steve Reich『Early Works』
全体に渡ってほぼ何かを繰り返している作品が多い。いきなり名曲「Come Out」から始まる。ずっとマイクがハウって配信トラブルに見舞われた配信者の苦闘の12分みたいな感じ。20分同じフレーズが繰り返される究極のミニマルサウンド「Piano Phase」も最高。
7.FLEE『ATHOS : ECHOES FROM THE HOLY MOUNTAIN』
多岐に渡るスタイルのワールドワイドミュージック。聴く『世界ふしぎ発見!』。どこかの宗派の宗教音楽っぽいMurat & Esma Ertel「Garden of Kibele」やJimi Tenor「Idan Kuoromiehet」。インドのゴアのようなDaniel Paleodimos「Doxology」。
8.László Dubrovay『"A² "/ Oscillations Nos. 1-3』
ジャケット通りEMSシンセサイザーだけで鳴らしているのかと思いきや、チェロやバイオリン、ピアノなどの音が聴こえてくるし、全体に鉄腕アトムのSEみたいな原始的なシンセ的な効果音が鳴っている。シンセサイザーをメインに他楽器がスパイスとなってところどころ振りかかっている雰囲気。
9.古舘徹夫『Macbeth』
地獄みたいなサウンド。ジャケのような森の中で起こる怪異をテーマにした伝承的なホラー映画で流れてそうな雰囲気。吹き荒れる嵐のようなノイズの中で鳴り続ける吉田達也のドラム。それらに混じって東玲子の悲鳴のような声も聴こえてくる。1曲が長いのでプログレのように曲中で何度も展開が変わる、静と動の序破急が凄い作品。
10.Various Artist『1st panorama de musique concrete (Remastered)』
サンプリング音楽の祖、ピエール・シェフェールとピエール・アンリを筆頭にミュージック・コンクレートの様々な音楽が収録されているコンピ盤。呪いのビデオみたいな音楽が流れ続ける。
以上。