歌謡曲とは?
主に昭和の時代に流行した日本の楽曲を総称したものを指す。スタイルとしては明治期に西洋音楽×日本古来の音楽によって生まれたもの。元は流行歌(はやりうた)と呼ばれていた。歌謡曲はラジオ放送より西洋音楽が国内に普及していったことに伴い、日本オリジナルの歌謡曲も普及していった。しかし、平成に入る前後に登場したJ-WAVEの放送により、さらに海外の音楽の影響を受けた楽曲(宇多田ヒカル、MISIA etc.)が台頭し、1990年代は渋谷系のムーヴメントも発生した(J-POPという呼称が広まる)。これにより、若者の間で流行する楽曲と旧来の楽曲の趣向に差異が生じたため、現在では「演歌・歌謡曲」として今国内で流行りのポップス(J-POP)とは別ジャンルのような形で区分けされる。
アーティスト
椎名林檎
現代の歌謡曲にあたる有名ミュージシャンといえば椎名林檎だ。
初期はUKロックのような印象だったが、徐々に歌謡曲チックな楽曲を発表するようになった気がする。椎名林檎は2018年の10月にエレファントカシマシの宮本浩次とコラボして「獣ゆく細道」という楽曲を発表しているが、これがもう完璧に歌謡曲だ。そして音も映像もカッコいい。
☟セルフカバー作品『逆輸入 ~航空局~』では石川さゆりに提供した「暗夜の心中立て」「名うての泥棒猫」「最果てが見たい」が収録されており、一層歌謡曲らしい楽曲が揃った作品となっている。
☟石川さゆり自身もKREVAやMIYAVIをフィーチャリングし、ロックとヒップホップと演歌を融合させている。「演歌・歌謡曲」界隈でも現在のポップスの要素を取り入れる試みがされているようだ。
宮本浩次
"宮本浩次"名義で発表するソロデビュー曲であり、ドラマ『後妻業』(カンテレ)の主題歌でもある。PV中での宮本の運転は見ものだ。流石は首周都高を何周もドライブする男。
アルバムには椎名林檎とのデュエット曲「獣ゆく細道」やスカパラとのコラボ曲「明日以外すべて燃やせ」も収録されているが、全体的にいろんなエッセンスが実験的に盛り込まれている気がする。「解き放て。我が新時代」は「ガストロンジャー」のようなラップ的エッセンスが盛り込まれている。
宮本なりの新解釈でアレンジされた歌謡曲も最高。いつも宮本は先輩の曲をカバーするとき(特に女性歌謡曲)はかなり抑え気味に丁寧に歌う印象があるが『ROMANCE』ではかなりロック的な解釈も盛り込まれていながら、原曲の良さを引き立てている。
折坂悠太
下記作品はまだ平成であった最後の年に発表された作品(2018年)。「加山雄三のすべて ザ・ランチャーズとともに」を彷彿させるジャケと、歌謡曲チックな抑揚・こぶしをつけた歌い方。
清竜人
前述の折坂に続き、平成を筆頭に楽曲が始まる。ジャケットも歌謡曲歌手のようなシンプルな背景に背広姿である。音楽遍歴を見るに、バラードやアイドルと来て、歌謡曲と言う新たな引き出しが引き出されたような感じだ。「馬鹿真面目」は布施明のような雰囲気で「私は私と浮気をするのよ」はアイドル歌謡といった感じだ。
☟「フェアウェル・キス」とのギャップが凄い「Knockdown」はモノクロPVにジャジーなサウンドで、歌謡曲感が強い。
吉澤嘉代子
前述の清竜人ともデュエット曲「目が醒めるまで」を出しており、ヒロシ&キーボ―のようだ。
☟上記作品に収録の「鬼」は可愛らしいアニメーションPVだが、アイドル歌謡的なテイストとなっている。
☟椎名林檎っぽい「地獄タクシー」はビッグバンドっぽい伴奏で、ムード歌謡ちっくなR&B的なグルーヴがある。
アイドルとの親和性
以下のアーティストは声優・アイドル出身のアーティストだ。前述の清竜人もアイドルを通過点として現在は歌謡曲風のアプローチを試みている部分が見える。アイドル歌謡なるものがあるが、親和性は高いのだろう。
田村芽実
もともとハロプロのアイドルグループの一人だったらしいが、ソロで出した『無花果』というアルバムがネオ歌謡曲というべき感じだ。アイドル風にカスタマイズした歌謡曲のカバーなどではなく、オリジナルの歌謡曲を自身の曲として歌うのはなかなかこの時代では珍しい。どことなく松田聖子や中森明菜を彷彿する感じがする。
所属グループのアンジュルムの楽曲もやはり若干歌謡曲っぽい大人びたビッグバンドの伴奏だ。東京事変のような椎名林檎のような感じがしたが、編曲はどうやら亀田政治ではない(亀田政治はLittle Glee Monsterの編曲は担当してたりする)。どうやら、歌謡曲っぽさは歌謡曲のルーツを辿ればわかる。洋楽(1950年代当時アメリカではジャズが流行していた)を日本に輸入した際に日本的な和の要素と組み合わさってできたのが歌謡曲だ。そりゃジャズ的要素があって当たり前だ。
―――シティポップ
降幡 愛
声優の方でアニメ『ラブライブ!サンシャイン!!』ではAqoursというアイドルユニットとして活動しているが、ソロでは80年代のシティポップ・アイドル風の楽曲をアップロードしている。
シティポップやアイドル歌謡をカバーした下記のアルバムではオメガドライブや山下達郎などをカバーしている。80年代のグルーヴを再興しようとしているように思える。
☟PVも80年代を彷彿とさせるアニメ風絵柄。『みんなのうた』で流れそうな雰囲気だ。
芸人との親和性
下記は藤井隆主催の音楽レーベル『SLENDERIE RECORD』からリリースされた作品だ。芸人の楽曲を集めたコンピレーションだが、かなり歌謡曲チックな作品も多い。
後藤 輝基(フットボールアワー)
藤井隆プロデュース作品で宮本浩次並みに歌謡曲のカバーをしているが、全作品オシャレで乙女ハウスっぽい。本田美奈子カバーの「悲しみSWING」がなかなか良い。
レイザーラモンRG
サカナクションっぽい雰囲気だが、サビのメロディーが薬師丸ひろ子っぽい。途中のギターソロ部分も込みで80年代の歌謡曲と言う感じだ。
以上。